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戦時下。日常と呼ぶには恐ろしい日常です。そして『絣の着物』の登場人物たちはみな、この恐ろしい日常を、たぶん気力だけで平常運転化して生きている。ネガティブ・ケイパビリティ?麻痺状態?思考停止?ともかくそれが生きる術だったのでしょう。なにせ戦争に関係なく日はのぼり沈んでいき、肉体がここにあるのだから。何て恐ろしい状況なのでしょう。この状況に「慣らされる」ということは、なんて恐ろしいことなのでしょう。
読書記録です:
note.com/nat_kc/n/nb1...
『絣の着物』 壷井栄戦争末期短篇集
編集・解説 秦剛 こはく文庫 2025
戦争末期、国内では印刷出版状況が悪化、「外地」での書籍印刷が試みられていました。用紙をはじめとする物資が足りなかっただけでなく、言論統制がますます厳しくなり表現者の作品発表の場も制限されていたのです。本書は壷井栄の最後の短篇集で、敗戦の2カ月前に北平(北京)で印刷・発行されましたが、著者にすら届くことはなく、日本国内での存在は確認できず、刊行後80年間幻とされてきたそうです。最近になって北京大学図書館の蔵書の中で発見され、こはく文庫の新装版としてよみがえったのがこの本です。
(→続き)男と女のあいだで見えている風景が違いすぎて地獄のような現実が、各章の独白によって『藪の中』的に展開する。物語の構造に、若さに対する激しい肯定感と「老害」への憎悪という物語の思想が象徴的に取り入れられていて戦慄した。
読書記録です:
note.com/nat_kc/n/n21...
『分断80年』左右/南北の問題が複雑に絡み合い苦闘する朝鮮半島。想像を絶するほど苛烈な国家的チャレンジを課された国の市民はつねに政治に積極的に向き合う。緊張感みなぎる全編のなか著者自身の体験がつづられる章末のコラムが、読書中の小さな楽しみだった。
『アナキズム』アナキストに憧れるが、頭脳とガッツ(と体力)と人徳がそれぞれ圧倒的に足りないことがはっきりわかってしまった。炸裂する栗原節にうっかり楽しくだまされそうになるけれど、ほんとにそうだ。
読書記録です:
note.com/nat_kc/n/nce...
わたしたちは多くの場合、選んでもいないどこかの国の一国民として生まれる。国家は大地のようにわたしたちを支えてくれるようでいて、じつはそうではないようだ。
足元が揺らぐ感覚に恐怖するのは、地震のときだけではない。
国のかたちに翻弄される人びとを描いた本と、その「かたち」を破壊し逃げ続けようとする運動についての本。
『分断80年 韓国民主主義と南北統一の限界』徐台教、集英社、2025
『アナキズムQ&A やっちゃう、やっちゃえ、やっちゃった』栗原康 筑摩書房 2025
『ヤブノナカ』
金原ひとみ 文藝春秋 2025
一見進歩的でも心身に浸みついた考え方の癖が見事に旧弊でミソジニーとマチズモとセクハラとモラハラとマンスプのカクテル状態の人。社会構造の設計上こういう人間の存在は仕方ない。かれらがまき散らす害悪について鈍感な人間に対する呪詛と怒りそして作者自身の無力感と苛立ちと絶望に駆動されているかのような疾走型の文は、巧みに設計されたジェットコースターのよう。爽快なのに身体の一部がもぎとられるような恐怖を感じる。(続く→)
『祝福の種 新しい時代の創世神話』
キャスリーン・マシューズ作 アリソン・デクスター画
白岩英樹訳 作品社 2020年
「原罪」ではなく「祝福」によってはじまる、創世神話の語り直し。
ここでの神さまは、たがいに非対称的であるような存在をつくりません。「人間の男女」はいわゆる男性性・女性性を備えた存在ではなく、互いに対等です。
どのページを開いても、まるで「祝福」のカードを開いたような、はなやかな絵本。しかもそこに綴られている日本語の訳文のうつくしく、きよらかなこと。メッセージをこめた贈り物としてもすてきだと思います。
読書記録:
note.com/nat_kc/n/n63...
『祝福の種 新しい時代の創世神話』 キャスリーン・マシューズ作 アリソン・デクスター画 白岩英樹訳 作品社 2020年 この創世の物語は、原罪ではなく祝福によってはじまります。 初めに、神さまは歌をうたって、すべてのものに命を吹き込みました。(略) 神さまはあらゆるものに命を吹き込んで、最後に、人間の男と女にも歌をうたいました。 「創世」と聞いて思い出す旧約聖書の『創世記』では、神は、天...
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Nat
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『絣の着物』 壷井栄戦争末期短篇集 編集・解説 秦剛 こはく文庫 2025 「80年もの間、北京で眠っていた幻の短篇集」 戦争末期、国内では印刷出版状況が悪化、「外地」での書籍印刷が試みられていました。用紙をはじめとする物資が足りなかっただけでなく、言論統制がますます厳しくなり表現者の作品発表の場も制限されていたのです。 本書は壷井栄の最後の短篇集で、敗戦の2カ月前に北平(北京)で印刷...
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『ヤブノナカ』 金原ひとみ 文藝春秋 2025 文芸誌の編集者が作家の卵の女性を甘い言葉で釣って食い物にした…という数年前の出来事が被害者により告発された。古参男性編集者、被害者(?)女性、作家、中堅男性編集者、さらにその家族たちの独白を通して、この「性的搾取」事件そして業界内のセクハラ・パワハラの姿が浮かび上がる。『YABUNONAKA』はもちろん芥川龍之介の『藪の中』へのオマージュだ。誰が真...
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わたしたちは多くの場合、選んでもいないどこかの国の一国民として生まれる。国家は大地のようにわたしたちを支えてくれるようでいて、じつはそうではないようだ。 足元が揺らぐ感覚に恐怖するのは、地震のときだけではない。 最近読んだ2冊の本は、国のかたちに翻弄される人びとと、その「かたち」から逃げ破壊し続けようとする運動に生きる人びとの話だった。 📖『分断80年 韓国民主主義と南北統一の限界』徐台教、...
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必読。2026/6/18 OUT!!!
清水和裕、貴堂嘉之、鈴木英明編『奴隷制・奴隷貿易を知るための66章』明石書店 amzn.to/4a4sD94
人類史の負の遺産「奴隷制」を、古代から現代、大西洋から日本まで多角的に照射する。気鋭の研究者たちが、強制労働や人身売買の構造をさまざまな視点から徹底解説。自由を奪われた人々の抵抗と記憶を辿り、現代に潜む差別の根源を問い直す、本質に迫るための必読入門書。
吉川浩満