『顔無し』ゼツ
ゼツは故郷を焼かれた。
とくに特徴の無い農村は、戦禍で容易く燃える。
後継者争いに巻き込まれ、対立候補の軍勢が略奪をし、士気高揚のために殺戮が行われ、そして火が放たれた。
ゼツは家も肉親もすべてを失い、その怒りと憎しみから軍に志願し、敵の村落を焼いた。
やがて敵対候補の死で戦いは終結し、ゼツの戦いも終わった。
戦いの意義を失ったゼツは軍を辞したが、故郷はもはやなく、糧を得るために傭兵団の『黒剣隊』に参加し、そしてその団もまた裏切りで焼かれた。
その際に顔までも焼かれたゼツの本心を、もはや誰も窺い知る事はできない。
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矢矧