「……っ!」
声にならない悲鳴と共に、ディルは跳ね起きた。
悪夢というほど明確なものではなかったが、自身の体が何の前触れもなく落下する感覚に襲われ、恐怖で目が覚めたのだ。
咄嗟に驚愕という反射ではなく、より踏み込んだ恐ろしいという感情に直結するのは、それが実体験に基づいた記憶の再現だからである。
野盗に追われ逃げた夜の森、足を踏み外して転がり落ちた崖の記憶は、未だ鮮烈にディルの心に刻み付けられていた。
最終的には落ちながら掴んだ植物の蔓がディルの命を救った。だが落下の摩擦は灼熱した砂を握ったようにこの手を灼き、その痛みもまた、忘れられるものではない。
お題:灼熱
#語彙トレ2026