#語彙トレ2026
蜃気楼閣フラグメント
06/12 - 飽和
弓張の役割は時に「何もしないこと」にある。
あざらし(青波零也)
〈潮溜まり〉の人口は飽和している。土地もいつまで保つかわかったものではない。
「現状がおかしいっていや、そりゃそうだ」
「物わかりがよくて助かります、弓張警部補。では、〈潮溜まり〉の解体を望む我々の主張もご理解いただけるかと」
「理解はするぜ」
慇懃な――慇懃無礼であることも、お互いに承知の――「工事屋」の仕切り役に、弓張は場違いなまでの軽い調子で言う。
「好きにやれよ、俺ぁ手も口も出さねぇ」
それはあくまで「弓張が」であり、「工事屋」の最大の障害である極道者たちは別の話。弓張が双方に口を利かないというのは、「殴り合え」という意味に他ならない。
「やれそうにねぇならとっとと〈市中〉に帰れ」